

鈴木 坂本さんは営業についても、自社に営業部門があるのだから、商社を通して営業するのではなく、自社の営業が直接お客様に商品を売ることが必要だとおっしゃっていますね。
坂本 日本のメーカーはたいへん特殊なビジネス形態をとっていて、メーカーの営業というのは商社が集めてきた情報や販売計画をまとめて報告しているだけです。メーカーに営業部門があるなら商社はいらないし、商社を使うならメーカーに営業はいらないのではないかと考えました。現在のエルピーダメモリの製品構成を考えると、お客様にダイレクトに売っていかなければ、ものが売れない時代になっています。そうしたことから、エルピーダメモリは自社で営業をすると決めました。
当初は、社内からもそんなことをしたらたいへんなことになるという反発もありましたが、お客様からはダイレクトになって良かったという意見がほとんどでした。
鈴木 小売業でも同じようなことが言えます。小売業にはバイヤーやマーチャンダイザーがいますが、従来は問屋や商社から提案された商品の中からピックアップして買い付けるというやり方がほとんどでした。しかし、それでは、お客様のニーズの変化についていけません。お客様に毎日接している小売業は、ニーズの変化が販売情報として日々入ってくるのですから、そのような情報を活かして、メーカーさんや専門家の人たちと一緒に商品開発を行うことで、お客様の中にある潜在的なニーズを商品化できるのではないかと考えて、そのような取り組みを進めてきました。これを私たちは「チームMD(マーチャンダイジング)」と呼んでいます。チームMDによって、お客様に満足していただける商品をつくることで、私たちもメーカーさんも、チームの全員がメリットを共有できます。セブン‐イレブンでは、すでに売上げの半分以上がそのようなチームMDでつくったオリジナル商品になっています。
坂本 まったくおっしゃる通りです。会社の損益にもっともインパクトを与えるのは製品の価格です。そこを自分たちで管理できなければ、利益管理ができないに等しい。そこについてエルピーダメモリはダイレクトにお客様に販売することで、管理ができる体制にしました。
鈴木 坂本さんは、「会社は夢でスタートして、情熱で大きくなって、責任感で安定し、官僚化で衰退する」とおっしゃっていますね。会社が成長して規模が拡大すると、必ずといっていいほど官僚化していきます。それを防ぐにはどんな点を注意されていますか。
坂本
日本の会社は大きくなると官僚化がどんどん進みます。面白いことに台湾の会社は、夢で始まって情熱で大きくなるというところを行ったり来たりして、官僚化しません。もっとも、責任感で…というところに進まないため、時々、問題が発生しますが。
私たちエルピーダメモリは、まだ官僚化する域に達していません。そういう問題を議論する余裕もありません。ただ、人事、財務、総務などは普通の日本の会社と比べてかなり少ない人数でやっています。その部署の人数を増やすと、あっという間に官僚化が進みます。
鈴木 ほんとうにそう思います。「スタッフ部門の人員を増やしてはいけない」と私もつねに言い続けてきました。スタッフは何の担当というように役割を固定せずにマルチに対応できるようにしておく方が、人も少なくてすみます。また、人が少ない方が情報も正確に伝わります。ですから、少ない人数で情報を共有して、対応していく方が効率がいいわけです。人数が増えると、何か仕事をしなければいけないと思って、余分な仕事までしてしまう人が出てくる可能性もあります。
また、緊密な情報共有が求められる商品開発部門も人数を絞り込みました。現在、お客様は単品ごとに商品を見ているわけではなく、ジャケットとパンツ、家のインテリアとカーテンというように全体のコーディネートを考えて商品を買われます。ですから、バイヤーも、人数を絞り込んで広い範囲を見ていく必要があります。
今日は、坂本さんのお話をうかがい、私の考えていることと重なりあう部分も多く、たいへん意を強くしました。また、これからの仕事の参考になる点も多々ありました。お忙しい中、長時間にわたりありがとうございました。