

(みやた・ひであき)
1948年愛媛県生まれ。1970年東京大学工学部卒業。
1972年東京大学大学院修士課程修了後、石川島播磨重工業を経て、1979年東京大学助教授に就任。
1994年より東京大学大学院教授。工学系研究科、環境海洋工学専攻とシステム創成学科知能社会システムコース担当。
『アメリカズカップのテクノロジー』『プロジェクト・マネジメントで克つ!』『理系の経営学』など著書多数。

鈴木 宮田さんは、大学での研究や学生教育のみならず、水中翼船の開発や経営システムの開発、さらに世界的なヨットレース「アメリカズカップ」の日本チームの技術統括など、実に幅広く活躍されていらっしゃいます。そのようなご経験から、商品やビジネスモデルの開発の際には、個々の技術レベルだけでなく、プロジェクト・マネジメントの力が結果を左右すると指摘されています。
消費飽和の時代を迎え、個人消費市場では潜在ニーズに応える「いままでにない新しい商品やサービス」でなければ、お客様に価値を認めていただけないようになっています。そのため、私ども流通業も、つねに新しい商品・サービスやビジネスモデルの創造に挑戦していかなければ、持続的な成長を手にすることができません。今日は、そのような創造的なビジネスを進める上で、重要なポイントは何かといったお話をうかがいたいと思います。
宮田さんがおっしゃっているプロジェクトというのは、プロジェクトチームをつくって取り組んでいるものに限らず、新しい価値を創造する仕事はすべてプロジェクトとしてとらえられているわけですね。
宮田 その通りです。新商品の開発、販売促進、コスト削減運動、あるいは1台の車を新しいお客様に売ることもプロジェクトです。仕事はすべてルーチンとプロジェクトに区別ができます。ルーチンは決まりきった仕事で、創造性の低い継続的な仕事です。これに対してプロジェクトは新しい価値を創造する仕事で、経営においては、この比率をいかに高めていくかが重要です。
鈴木 あらゆる仕事をルーチンと考えるのではなく、プロジェクトととらえて取り組むことが必要ですね。
宮田
人は変化という試練によって成長します。同じことを繰り返している限り成長はありません。プロジェクト・マネジメントで人を活かし、価値の創造、実現を目指さなければなりません。
価値を創造する場合、商品でもビジネスモデルでも、理念(ビジョン)→基本概念(コンセプト)→基本構造(モデル)→設計・問題解決→実証(テスト)→実行(製造・販売)というプロセスをたどるわけですが、今の日本の場合、何をつくるかというビジョンが貧弱で、コンセプトやモデルも借り物で、よそがやっているからうちもやろうというモノマネの仕事が多いように思います。これでは、新しい経営戦略が登場したり、技術革新が起こったりするとすぐに敗退してしまいます。
鈴木 私も、つねにモノマネではだめだと言い続けてきました。モノマネをしている限り決して一番にはなれません。セブン‐イレブンは、創業当初からモノマネをせずに、自分たちでゼロからつくり上げてきました。また、私は、ブレイクスルー思考で、未来の視点からジャッジして、現在何をしたら将来思い通りの成果を得られるのかを考えるようにと言い続けています。
宮田さんは、日本は技術力や個人的な能力の水準は高いにもかかわらず、それを活かすプロジェクト・マネジメントの能力がきわめて低いために、国際的な競争力を失っていると指摘されていますね。そのようなマネジメントの視点から、今、日本の企業経営に欠けている点は何だとお考えですか。
宮田 ITやネットなど、使える技術がいろいろと出そろっているにもかかわらず、それらをうまく使いこなしていない点でしょう。私は、成功する経営は必ず科学的論理性を尊重していると考えています。そうした視点から見て成功しているのがセブン‐イレブンだと思います。セブン‐イレブンでは、POSというITを経営の中心に置くことで、死に筋を的確にとらえ、売れ筋を追求する単品管理を実現しています。さらに、効率のよい商品調達と物流、そして広範囲をネットワーキングした店舗展開を同時に実現することで、短期間で流通の代表となるまでに発展してきたのではないでしょうか。
鈴木 セブン‐イレブンを創業したとき、他に手本となるものは何もありませんでした。品揃え、単品管理、物流、商品開発などあらゆるものを、すべて自分たちでつくり上げてきました。生産性を追求し、業界の常識を破りながらの挑戦でした。
宮田 セブン‐イレブンは、アメリカのしくみをそのまま持ってくるのではなく、日本のマーケットに合わせて、さまざまなシステムを構築されたことが成功につながったのだと思います。また、世の中の常識や慣行となっていることは、すべて過去の誰かがつくった価値です。それをそのまま継承していたのでは進歩がありません。成長していくためには、今の常識、慣行を根本から見直すことが必要です。