新・総合生活産業  変化し続ける社会の中で、進化し続ける「新・総合生活産業」を目指しています。

対談 ブレイクスルーのヒント

トレンドをとらえ、ヒットを仕掛ける


セブン&アイHLDGS. 代表取締役会長 鈴木敏文
対談 ブレイクスルーのヒント

(ほりき・けいこ)
東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業後、マガジンハウス入社。 「ELLEjapan」「クリーク」編集部などを経て、1993年「anan」編集部キャップ、1997年「GINZA」副編集長、2001年「anan」編集長、2006年「BOAO」編集長に就任。幅広い人脈等を活かして斬新な企画を次々と生みだすヒットメーカーとして注目を集めている。


雑誌「BOAO」編集長 堀木恵子
2006年11月収録

女性読者にはより直截な表現がウケる時代

鈴木 堀木さんは、雑誌「anan」の編集長として、数々のヒット企画を打ち出して、販売部数を伸ばし、今年の7月からは「BOAO」の編集長に就任されたとうかがっています。いま出版業界はたいへん厳しい環境にあると聞いていますが、その中で売上げを伸ばすというのは、並々ならぬ手腕が必要です。今日は、ヒットを生み出す秘訣をうかがいたいと思っています。
さっそくですが、いま手掛けていらっしゃる「BOAO」について教えてください。

堀木 たとえば「anan」は、シンプルに言いますと10代後半から40代くらいまでのたくさんの方を読者対象にしていますが、「BOAO」の方はもう少し対象を絞っていて、20代後半から30代前半を中心に考えています。
「コンサバ(コンサバティブ)誌」という位置づけですが、それはいま日本人に一番合うファッションやライフスタイルを紹介していくという考え方です。
従来のファッション誌は、ファッションの紹介写真にしても、外国人モデルに服を着せてかっこう良く見せるのがふつうです。でも「BOAO」の場合は、日本人モデルに着せるというように、読者の生活により接近したところから発信することを基本にしています。

鈴木 それは「新・総合生活産業」を掲げる私どもセブン&アイHLDGS.のビジネスに通じるところがありますね。堀木さんの目から見て、どのように女性の感覚は変化しているとお考えですか。

堀木 簡単に言いますと「おやじ化」していると思います。雑誌の見出しにしても、以前は「フェミニン」とか「カジュアル」というようなファッション用語を取り入れていました。ところが、いまではそういう言葉を使うとむしろ雑誌の売れ行きにマイナスの影響がでるほどです。見出しはもっと直截なもので、俗にいう「エグい」つけ方をしたほうがウケが良いんです。たとえば「無敵アイテム」とか「自腹で買う」とか。5年ほど前では考えられないような言葉を使った方が好評です。

鈴木 「おやじ化」と言うと、十数年前も「おやじギャル」などという言葉が流行ったことがありますが、それとは違うのですか?

堀木 確かに中尊寺ゆつこさんのマンガが流行った頃も「おやじ化」と言われましたね。でも、その当時は、腰に手をあてて、仁王立ちして栄養剤を飲むというような行動上での「おやじ化」で、内側は女の子だったと思います。現在は、たとえば1年ほど前には「モテ服」など「モテ(る)」がキーワードになっていたように、外見上は男性受けを意識して女の子らしいのですが、中身が「おやじ化」していると思います。恋愛などの姿勢も、いまや男の子より女の子の方がずっと積極的です。この3〜4年ほどの間にこのような「おやじ化」が顕著になってきたように思います。

お客様の感覚に合わせてつくり手や売り手の感覚を変える

鈴木 いま、お客様の感覚というのは、短い期間にどんどん変化していますね。このような時代は、商品も経営の仕方も変わらなければいけません。しかし、なかなかお客様の変化に追いつくことができません。

堀木 デパートの婦人衣料の売場に行くと、いまだに「ヤングキャリア」「ミセス」などというように分けてありますが、私が読者を通して感じているのは、40代のおしゃれな人は気持ちは20代で、「ミセス」と書いてあるような売場には絶対に行かないということです。昔からのコーナー分けを、いまだにずっと続けていて、それを壊そうとしないのは、たいへん不思議に感じます。
また、かつてデパートと組んで成功した日本のブランドも、数年前からどんどん成績が落ちているところがあります。その一因としては、これまでの経験で売れたものしかつくらないようにしたことにあるのではないでしょうか。そんな商品だけでは、消費者は飽きてしまいますよね。
また、かつてデパートと組んで成功した日本のブランドも、数年前からどんどん成績が落ちているところがあります。その一因としては、これまでの経験で売れたものしかつくらないようにしたことにあるのではないでしょうか。そんな商品だけでは、消費者は飽きてしまいますよね。

鈴木 過去の経験に頼っていると、どんどん変化しているお客様に置いていかれてしまいますね。いまや母親と娘さんが同じセーターを着るなどということは当たり前になっています。カラーにしても、いまは若いから、シニアだからといって違いがあるわけではないでしょう。ところが、バイヤーたちはミセスやシニアというと、自分たちが子供の頃の親のイメージを思い描いています。

堀木 それでは買い手と大きな感覚のズレができてしまいますね。雑誌の世界では、今年グレーが流行するというと、ヤング向けの雑誌だけではなく、40代、50代向けの雑誌までグレーを取り上げています。若い子もシニアも違いがなくなっています。

鈴木 これまでは、つくり手の側に「若い層とシニアを同じにしては売れない」という強い拒絶反応がありました。まず、そこから壊していかないと売場は変わらないと考えています。