


(ほしの・よしはる)
1960年、長野県生まれ。1983年、慶應義塾大学経済学部卒業。 1986年、コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了後、日本航空開発(現JALホテルズ)、シティバンクを経て1991年、星野リゾート社長に就任、現在に至る。
リゾナーレ、アルツ磐梯リゾート、アルファリゾート・トマムの再建を手がける一方、2005年にはゴールドマン・サックスとの業務提携を発表、温泉旅館再生事業にも力を注いでいる。

鈴木 今回は、軽井沢の星野リゾートの社長であり、数多くのリゾート再生でも成功を収
めている星野さんをお迎えしました。日本では1980年代末のバブル期に多くの企業が
リゾート開発に参入し、その後バブルが崩壊する中で各地のリゾート事業も不振に陥りました。そのような中で、リゾートの再建に成功されたのは、革新的な経営に取り組んでこられた結果だと思います。今日は、その経営革新のポイントなどをうかがいたいと思います。
星野さんがリゾート事業に取り組まれたきっかけは何だったのですか。
星野 私の実家がもともと軽井沢でホテル業を営んでおり、その家業を継いだことがきっかけです。ちょうどバブル期で大手資本が相次いでリゾート 事業に参入していました。当時の私たちは、大手資本との競争の中でいかに事業を成長させていくかということに専念していました。企業ビジョンを「リゾート運営の達人になる」と掲げたのもこの頃でして、ビジョン達成を目指し取り組んでいるなかで、いくつか再生のお話をいただくようになりました。現在では13施設の運営を行っています。
鈴木 以前、日本経団連でも国内の観光事業を強化しなければならないという話をしていました。最近はだいぶ事情も変わってきていると思われますが、国際的に見て日本の観光事業というのは遅れているのでしょうか。
星野 日本文化は世界的にも知名度が高く、また安全性の面や交通の便利さなど、世界的 に見ればたいへん高い水準にあります。ところが、海外から日本に来る観光客は年間600万人です。観光大国と言われるフランス、スペイン、アメリカ、中国、イタリアなどは年間3000万人〜7000万人の集客力を持っていますから、大きな開きがあります。日本はせっかくのインフラを十分に活かしていないと思います。
鈴木 流通業では、一般的にアメリカの方が日本より進んでいると考えられてきました。 しかし、私はアメリカのセブン-イレブンの経営も見ていますが、オペレーション・レベルなどを見ると日本の方がずっと質が高いと言えます。接客サービス一つとっても日本の方がずっと進んでいます。
星野 旅館の場合も、サービスの質の高さでは日本の方が優れている部分も多いと思います。ただ、アメリカのホテル業に見習うべき点もあります。それは予約獲得の仕組みです。いくつかのホテルでは予約センターがあり、そこが予約獲得に専念しているので、予約獲得のスキルも高く、また、顧客情報をデータベース化したり、業務を標準化したり、あるいは航空会社のマイレージと連動した予約の仕組みなど、新しいサービスを開発するといった面で優れた仕事をしています。
鈴木 日本が持っている優れたインフラを活かしていくためには、どのような取り組みが必要だとお考えですか。
星野 日本の旅館経営は、流通業で言うと、ちょうどスーパーストアやコンビニエンスス トアなどが登場する以前の商店街の経営と同じ段階なのではないでしょうか。つまり、大部分の観光旅館は、家族的な経営が主体で、効率的な経営の仕組みやサービス提供の仕組みができていません。そのような運営の仕組みをつくって、それぞれが競争力を高めていくと、日本のリゾートや温泉旅館も世界市場で戦えるようになると思います。