新・総合生活産業 変化し続ける社会の中で、進化し続ける「新・総合生活産業」を目指しています。

対談 ブレイクスルーのヒント

コンビニエンスストアを、流通ビジネスのプラットホームに

鈴木 ここ数年、コンビニエンスストアの既存店売上高が頭打ちにあるという点をとらえて、世の中では「コンビニが飽和状態になったためだ」という声が聞かれるようになりました。しかし、これも少子高齢社会になったことを考えれば何の不思議もないことだと私は考えています。従来、コンビニエンスストアは若い、食べ盛りの人たちをメインの客層として成長してきました。しかし、昨今のように若い人たちが減ってきて、しかも、コンビニエンスストアのように狭い商圏で商売をしているとなると、必然的に売上げは落ちるはずです。これは、コンビニエンスストアの飽和でも何でもありません。売上げが落ちたから「もはやコンビニの時代が終わった」と考えるのではなく、売上げが伸びない時代を迎えて、いかに利益を伸ばしていくかと考えるのが普通ではないでしょうか。

藤沢 私も、コンビニのように小さな規模で、しかも地域に根ざして展開しているお店というのは、これからそれぞれ特色を発揮していくことで、お客様を引きつけることが十分に可能だと考えています。そういう意味ではコンビニエンスストアはこれから面白くなるのではないでしょうか。

鈴木 コンビニエンスストアは、いまや地域の生活に根をおろして社会的なインフラになっています。それがなくなっても良いと思っている人はほとんどいません。要は、いまあるコンビニエンスストアの社会インフラとしての役割を生かし、消費生活のプラットホームとして、新たな機能をいかに取り入れていくかを考えることが重要なのです。

藤沢 コンビニエンスストアは、これからまさに進化と多様化の時代だと思います。そこで、「ご用聞き」のような、ほとんどの人が過去のものと考えているサービスを、鈴木さんが時代の最先端に位置づけ、取り入れてこられていることには、たいへん共感を感じていました。

鈴木 新しいことに挑戦するように、私は言い続けてきましたが、それは最近他のコンビニエンスチェーンが始めたような別の業態を手がけることとはまったく違うわけです。そもそもセブン-イレブンが始めたコンビニエンスストアのビジネスは、FC(フランチャイズ)制を根幹に据えたものです。コンビニの売上げが頭打ちになったからといって、たんにチェーンの本部だけの発想で、従来のコンビニエンスストアのビジネスとは何の関係もない新しいビジネスモデルに乗り換えるというのでは、加盟店さんに対する社会的責任を放棄するものです。私は、いまあるコンビニエンスストアをプラットホームとして活用して、新たな社会的ニーズに対応していくことによって、既存店のストアロイヤルティを高めるというような取り組みを進めていかないといけないと考えています。

藤沢 セブン・ミールサービスの配食サービスのように、店舗を軸にして高齢社会に対応したサービスをスタートさせたり、セブン銀行を立ち上げ、ATMを店舗に設置したりしてきたのもその一環ですね。FCビジネスでは、本部がつねに加盟店さんの利益を考えることが、加盟店さんの主体的な経営努力を引き出す基盤になっていくわけです。それがたとえば「ご用聞き」のように、各加盟店さんが積極的にお客様の中に入っていくことを可能にして、小売業のあり方を革新していくことにつながっているわけですね。

鈴木 おっしゃる通りです。また、コンビニエンスストアの飽和状態という言い方もたいへん不正確だと思います。コンビニエンスストアといっても、チェーンごとに、内容も質もまったくといっていいほど違います。質の違うものがいかにたくさんあっても、飽和状態にはならないはずです。自社競合を起こして売上げが頭打ちになったのなら飽和状態といえるかも知れませんが、セブン-イレブンは、全国47都道府県のうち、まだ33都道府県にしか出店していません。ですから、私はコンビニ飽和論はまったく当たらないと考えています。

お客様のニーズをトータルにとらえる新しい総合生活産業を創り上げる

藤沢 新しいことへの挑戦という点では、昨年末に、ミレニアムリテイリングとの経営統合の計画を発表されましたが、セブン&アイHLDGS.が今後、どういう挑戦をしていくのか、多くの人が興味をもって見守っています。

鈴木 ミレニアムリテイリングとの事業提携と経営統合については、もともと同社の和田社長と長年にわたって交流があり、その信頼関係を基礎に、新しい総合生活産業を創り上げるために相互に尊重し合って、お互い切磋琢磨していこうということからスタートしました。日本では1人のお客様がデパート、専門店、スーパー、コンビニエンスストアなどをその時々で使い分けていますね。このようなことは、先進国の中でも日本だけに見られるものです。そのため、デパートを手がけるミレニアムリテイリングといっしょになって、デパートからコンビニエンスストアまで、各事業会社間で情報やノウハウを共有化することで、お客様のニーズをトータルに把握し、お客様によりいっそう接近できるようになると考えています。

藤沢 私は、これから顧客情報をよりきめ細かくとらえ、商売に生かしていくには、電子マネーは大きな武器になると考えています。セブン&アイHLDGS.は、独自に電子マネーのビジネスも推進していくお考えのようですが、デパートからコンビニまでを事業会社として持ち、そこで独自の電子マネーを広げていくということは、たいへんな強みだと思います。

鈴木 従来のセブン&アイHLDGS.だけでも、1日1千万人のお客様にご利用いただいています。ですから、そのお客様に電子マネーを利用していただければ、それだけでも国内最大級の規模をもつカードになることは間違いありません。その上で、利用できる場所を広げ、使い勝手の良いさまざまな機能を付加させることで、文字通り普段の生活を支えるお財布代わりとしての役割を果たせるものと確信しています。

藤沢 実際の店舗、ネット、カードが複合していくことで、よりお客様とのコミュニケーションの密度も上がり、新たなビジネスチャンスも生まれてきますね。これからのセブン&アイHLDGS.に期待しています。

鈴木 変化の最先端を見続けていらっしゃる藤沢さんのお話はたいへん参考になりました。私どもも、藤沢さんやお客様、株主の皆様のご期待に応えられるように、チャレンジを続けていきたいと考えています。今日は、お忙しい中、たいへんありがとうございました。