新・総合生活産業 変化し続ける社会の中で、進化し続ける「新・総合生活産業」を目指しています。

対談 ブレイクスルーのヒント

試食や接客サービスなど店舗販売ならではの強みを活かす

鈴木 いままでにない新しい消費社会が動き出しているわけですから、私たちも、いままで以上に工夫していかなければ、変化に取り残されてしまいます。

藤沢 先ほども言いましたが、ネットのバーチャルな世界では、お客様の顔が見えません。リアルなお店なら、何も買わずに帰ってしまったお客様がいても、その人が欲しいものがなくて買わなかったのか、お店の対応に不満があったのかなどは、お客様の様子を見て判断できましたが、ネットの場合、買わずに帰ったお客様は顔色も残さずに立ち去っていくだけです。それだけに、お客様に対する感度をつねに高めておく必要があります。それが、かえって実際の店舗での商売を凌駕するようなネット販売の強さをつくり出したとも言えます。
ただ、逆に考えると、実際の店舗をもって商売をしていれば、お客様の顔を見て、直接対話もできるわけですから、もっと感度を高めることも可能なはずですね。鈴木さんも以前からおっしゃっていましたが、お客様に試食していただき、味を知ってもらうというようなことは、実際の店舗ならではのコミュニケーションで、たいへん重要です。

鈴木 実際に味わってみなければ、食べ物のほんとうのおいしさはわかりません。衣料にしても、そのスタイルや色が自分に似合っているかどうか、試着してみなければわかりませんし、風合いも触れてみないとわかりませんね。そのように実際に見て、触ってみないとわからないということはたくさんあるはずです。実際の店舗での商売では、そういう点を考えて、しっかりとお客様にアピールしていかなければならないわけです。

藤沢 接客も重要になっていますね。たとえば、試着して似合うかどうか、自分では判断できない場合も多いわけです。そういう時、自分の隣にいて、自分と同じ目線で商品の善し悪しを判断してくれる人がたいへん重要になります。お店の人は、何でも売れば良いというのではなく、そのお客様にとってほんとうに良いか悪いか、お客様といっしょになって考え、アドバイスするということが大切ではないでしょうか。もし、そのお客様には合っていないと判断したら、それはやめておいた方が良いと言えることも大切です。そうすれば、たとえその時は買わずに帰っても、次に何かを買う時に、あのお店なら信用できると、そのお店に行く気になります。

ゼロ金利からの脱却こそが国内消費回復の条件

鈴木 いまは、そういう心理が大切ですね。これも以前から言っていることですが、私はいまや経済の原則が経済を動かしているのではなく、人の心理が経済を動かしているのだと考えています。たとえば、日本ではずっとゼロ金利が続いています。金利が上昇すると、景気回復の足を引っ張るから、まだゼロ金利政策を続けるべきだという意見があります。しかし、私は、ゼロ金利からの脱却こそが国内の消費回復に絶対必要な条件だと考えています。なぜなら、預金に金利がつくことが、消費を促すことになるからです。
現在は高齢社会になって、シニア層が増加しているわけですが、シニア層の多くは老後の生活に備えて預金をし、その預金を頼りに生活をしています。たとえ、預金が1億円ある人でも、それが減る一方というのでは不安になります。金利がある程度ついているなら、いま思い切って1千万円使っても、しばらく我慢すれば、また預金が金利を生んでくれるわけですから心配もありません。しかし、金利がゼロでは、減っていくだけですから、不安になりますし、なるべく使いたくないと思うわけです。しかも、いまのように物が行き渡っている時代は、急いで何かを買わなければならないという人はほとんどいません。

藤沢 確かに、今は株式投資が注目を集め、個人投資家も増えていますが、シニア層では、まだ預金が一番安心だと考えている人が多いでしょう。それを考えれば思い切った金利政策が必要ですね。

鈴木 いま、国内の景気が回復しつつあると言われていますが、国内消費はほとんど伸びていません。ここ数年は、団塊の世代が退職し始め、退職金を手にした団塊の世代が消費を牽引してくれるという見方もありますが、その見方は甘いと思います。誰も自分があと何年生きるかわかりませんから、将来の生活に困らないだけの資金は確保しておこうと思うのが、人の心理です。ですから、いくら退職金をもらっても、使わないで預金や投資に回すと考えるのが当然ではないでしょうか。

藤沢 とくにこれからは、年金が減る可能性も大きいですから、皆さん、生活資金を確保しておきたいと考えるでしょう。何年か前にあるシンクタンクで相続についての調査があったのですが、その当時、相続税の対象となった資産を合計すると9兆円ありました。そのうち、実際に初めから子どもなどに相続させるために残してあった資金は2兆円で、残りの7兆円は、自分が生きている間の生活資金として取って置いた資産でした。