

鈴木 いかにスピーディーに変化を取り入れ、対応するかということも重要な点ですね。
日比野 私は、思考生産性を上げることが重要だと考えています。90年代の初めに、ある大手メーカーから、21世紀ビジョンを描くために、30人のスタッフを集め、3年かけて世界中で情報収集をしてきたが、集めた情報をどう分析したら良いかと相談されました。しかし、デカルト思考でその膨大な情報を分析していたのでは、また3年はかかってしまいます。そんなふうに6年かけてビジョンをつくっても、できあがった時にはもう時代遅れになってしまっていることは明らかです。この時は、ブレイクスルー思考でまず根本を考え、未来のあるべき姿を描き、そこから、これまで収集してきた情報を見直すという作業をしました。そうすると3年かけて集めた情報は、すでに古くなっていて、役立つものはほんのわずかしかありませんでした。
鈴木 デカルト思考で発想していては、生産性が悪いわけですね。
日比野 過去、現状をじっくり分析しているうちに、どんどんまわりの状況が変わっていってしまいます。ブレイクスルー思考の場合は、過去や現状を、いったんバイパスして、まずあるべき未来を描き、そのあるべき姿から、情報を取り、分析できるので生産性を上げることが可能です。
鈴木 私は、データというのは過去の情報なのだから、仮説を持たずにデータを見ても意味がないと言っているのです。未来のあるべき姿という仮説を持たずに、過去の情報をたくさん抱え込んでも、思考生産性が落ちるだけで、変化に対応できませんね。
日比野 情報というのは、少ないほど脳に優しいのだと思います。情報が多くなるほど脳の負担が重くなり、分析に時間がかかってしまいます。情報収集は、まず目的を明確にして、それに合わせて行うこと、これを目的「適」情報収集の原則と言っていますが、それが重要です。そして、紙に書かれた情報はすでに過去のものであり、生きた情報は人の頭の中にあるものですから、参画・巻き込みの原則を使うというように、情報の取り方も変えていく必要があります。
鈴木 確かにこれまでの考え方は、すべて現状の分析から始まっていました。たとえば、セブン-イレブンのお弁当やおにぎりを販売し始めた当初は、そんなものはどこの家庭でもつくることができるのだから商品になるはずがないと言われ、どこにも扱っているお店はありませんでした。しかし、それが主力商品に育っていき、お客様のニーズがあると分ると、今度は他のコンビニだけでなく、お弁当専門店ができ、スーパーや百貨店でも扱うようになりました。これだけマーケットが変化しているのに、未だに他のコンビニとの競争だけを考えてしまう傾向があります。そして、売れ行きが鈍化すると、競争が激しいから売場を縮小するという縮小均衡の発想になってしまいます。拡大成長を図るには、むしろ売場を広げてお客様にアピールすることが重要な のに、まったく逆の発想をしてしまうわけです。未来のあるべき姿から現在を考えずに、過去や現状の延長で考えるので縮小均衡に陥ってしまうことになるのでしょう。
鈴木 私どもは9月にセブン&アイHLDGS.を設立して、従来以上に各事業会社間の連携を深めて、シナジー効果を上げていこうと努力しているのですが、最後にこの点について日比野さんのお考えをお聞かせください。
日比野 私は「競争と響創」と言っているのですが、人が新しいことに挑戦していくための動機付けとしては、分割して競い合うということと、夢を持たせるということが大切だと思います。競争というのはデカルト思考で、従来から行われてきたことですが、夢を創るためには、人と人とが集まり、響き合って創造していくことが重要です。そして響創する時には、ブレイクスルー思考の7つの原則を使っていくことで生産性を高めていくことができます。従来、何かを生み出すという場合、独創性が重視されてきましたが、独創性は何か真実を探求するという場合に有効なので、ビジネスの場で解決策を見つけ出す場合には、独創ではなく響創が必要です。お客様との響創を含めて、お店や会社の中で響創の文化が定着すれば、仕事をすることがもっと楽しくなるはずです。問題が山積みよりも、全ての人々が、響きあって、優れた工夫・解決策が溢れる店舗づくりが、理想ですね。
鈴木 私どもは、終わりなき変革に取り組み、新しいことへの挑戦をし続けようと考えていますが、今日のお話はたいへん参考になりました。どうもありがとうございました。