

木瀬 鈴木さんは、「ダイレクト・コミュニケーション」をひじょうに大切にされているそうですが、私は自分の思いを現場の第一線にまで伝えるのはなかなかむずかしいと実感しています。当グループの各拠点を回り、社員と直接対話をするとよくわかります。組織を通じて上から何か伝えても、各段階で言葉にこめた思いが3割ずつカットされてしまい、最前線の社員には、最初の1割くらいの内容しか伝わっていないのが実態ではないでしょうか。社員の意識調査をしても、コミュニケーションが欠けているのがわかります。相関分析を行ってみると、それぞれの社員が自分の役割を明確に理解できていれば、自分でやるべきことがわかり、自ら行動を起こせるようになる、そこからやりがいも生まれてくるということがあらためて浮き彫りになりました。
鈴木 私は、セブン‐イレブンで加盟店さんの経営指導にあたっている約1600名のOFC(オペレーションフィールドカウンセラー=店舗経営指導員)やイトーヨーカドーの店長を集めた会議で直接話をしていますが、やはり何度も同じ話を繰り返さないと売場の最前線に立つ社員にまでは伝わりません。
木瀬 今はメールが使えるようになって、情報伝達の環境はたいへん便利になっているのですが、メールを送れば相手に話を伝えたつもりになって、相手がその内容を読んで理解したかどうかまで確認するということをしなくなっています。ですから、社内では、通達した内容が全部相手に伝わったかどうかを必ず確認するように指示しています。
鈴木 まったく同感です。私どもでも本部にある商品部や管理部門から店舗に、毎日たくさんの通達が送られていました。ある時、1日どれくらいの通達が送られているか調べさせたら、数百枚もありました。店長はそれだけの量の通達を読むだけでもたいへんな時間がかかります。まして、必要な部署の担当者にそれぞれ指示しようとしたら、それだけで一日が終わってしまいます。ですから、すぐに通達を絞り込むように指導しました。
木瀬 通達を出すことが自分の仕事だと考えている人が少なくないですね。言っただけでは仕事は終わらない、指示したことが実行されて初めて仕事が終わるのだと、私は社員によく言うのです。
鈴木 現在のように変化が激しい時代は、スピーディーな対応が欠かせません。そのために、コミュニケーションは、もっとも重要な課題です。また、せっかく優れた商品をつくっても、社内の部門間のコミュニケーションがとれていないために、価値がお客様に伝わらないということも起こります。これは、価値を認めたものしか買っていただけない現在の消費環境では、たいへんなマイナスです。
ですから社内コミュニケーションの徹底を通じて、お客様に新しい価値とご満足を提供するという方向で、全社員が一つになって取り組むことが、私どもにとっても、重要な課題です。今日は、木瀬さんのお話をうかがい、製品の開発からショールームでの接客まで、一体となってお客様にご満足を提供する努力を続けていらっしゃることが、よくわかりました。私どもでも参考にさせていただく点が多々あります。本日はお忙しい中、ありがとうございました。