

鈴木 お客様の生活時間も大きく変化していますから、昔なら1日や2日待っていただけたことでも、今はすぐに対応してもらえないと満足できないということが増えていますね。そのようなお客様のご要望に応えていくためにも、工務店さんとの施工ネットワークなど、既存のインフラを上手に活かしながら新しい取り組みを進めていくことは重要ですね。
私どもでは、インターネットの活用やテレビなどのメディアとも連携し、お客様のリビングにこちらから出向いていって積極的に新商品の情報をお伝えしたり、ご注文をうかがうといった取り組みを進めています。これを私は現代の「ご用聞き」と言っているのですが、消費飽和の時代には、そのようにお客様にこちらから近づき、お客様の都合に合わせて商売をすることでニーズを掘り起こしていくことが不可欠だと考えています。この4月からは、日本テレビで毎週金曜日に放映される「女神の市場(マルシェ)」で紹介された商品をセブン‐イレブンやイトーヨーカドーの店舗で販売したり、ネットで注文したりといった取り組みがスタートし、たいへん好評です。
TOTOさんでは、そのようなショールーム等を通じてのリモデル事業の占める割合も大きくなっているのですか。
木瀬 いまやリモデル関係の国内での売上げ構成は6割近くに達し、それだけショールームの役割も高まっています。リモデルをしたいという目的を持ってショールームにいらっしゃるお客様も、当初は必要最小限のリモデルをお考えです。それに対して、我々の方から接客を通じていろいろとお客様の立場でご提案していくことで、お客様がほんとうに望んでいるリモデルのあり方が見えてきます。その結果、お客様に期待以上のご満足を提供できるわけです。
このショールームで接客している人たちをアドバイザーと呼んでいますが、TOTOにとって、ショールームアドバイザーの役割はたいへんに大きく、私はお客様に一番近いショールームが最も重要な部門であると思っています。
鈴木 私たちもフレンドリーな接客サービスの向上に力を注いでいます。かつてコンビニエンスストアやスーパーでは、セルフサービスが当たり前の時代がありましたが、もはや商品を並べて置いておくだけではモノが売れない時代になって、どの店舗でもていねいな接客サービスが求められるようになってきました。そうした接客サービスを通じて、お客様に商品の価値や特徴をお伝えすることがたいへん重要になっています。
木瀬 私どもでは、ショールームにご来店いただいたお客様にアンケートをとり、5段階で接客などに対する満足度をお聞きしています。その5段階評価の「5」を「お客様に感動いただけた」ととらえています。うれしいことに、3年以上にわたり5点満点が全体の6割くらいに上っています。また、そのアンケートに書いてあるコメントも、感動的なものがたくさんあります。これはレポートにして毎月社内に配布し、感動を共有しています。
鈴木 接客サービスだけでなく、商品づくりから売場づくりまで、あらゆるものをお客様の立場に立って考えることが大切ですね。
私はよく「お客様のために」と「お客様の立場に立つ」ということはまったく違うと言っています。「お客様のため」と言っているうちは、やはり自分たちの都合のいい範囲でできることにとどまってしまいます。「お客様の立場に立って」考えていくと、自分たちにとっては都合の悪いことも、お客様に合わせて変えていかなければいけません。
木瀬 おっしゃるとおりです。私どもで提供しているキッチンやバス、トイレといった水回りは、使用する時の使いやすさはもちろん、使用後の掃除などの手入れのしやすさも重要なポイントになります。そうしたところまで使う人の立場に立って開発を進めることが大切です。たとえば、普段は目にする機会はないと思いますが、便器のフチ周辺や外観の形状も大きく進化しています。これは、掃除のしやすさも視野に入れたデザインなのです。
TOTOでは、女性の活用に力を注いでおり、そうした開発部門にも積極的な登用を図っています。お掃除まで含めると、ご家庭で水回り製品に接するのは圧倒的に女性が多いと言えます。また、どのようにリモデルしたいのか、意思を持っていらっしゃるのも女性の方が多いのです。そうしたお客様のニーズをとらえるには、やはり女性の視点は欠かせません。男性だけでモノづくりを考えていると、使う時にどんな機能が必要かというところにばかり目がいって、なかなか掃除のしやすさまでは配慮が行き届かないということになります。
鈴木 私ども流通業でも女性がたいへん活躍しています。そもそも総合スーパーなどは、来店客の中で女性の占める割合が圧倒的に高いのですから、商品づくりから売場づくりまで、女性の感覚を活かしていくことが当然といえます。男性だけであれこれ考えていてもブレイクスルーができないところに、女性の発想が一つ入ることで、ぱっとお客様の立場に立った新しい道が見えることもあります。
いずれにしても、男性、女性にかかわらず、自分たちの思い込みではなく、さまざまな角度からの情報を収集して、実際に利用されるお客様のニーズを的確にとらえ、それに対応することが重要ですね。
木瀬 最近では、お客様が生活空間全体を整然と自分のライフスタイルに合わせたものにしていきたいという傾向が強まっています。そのため、私たちは水回りのプロとして、お客様のニーズにトータルにお応えしていくために、建築家などの専門家といっしょになって商品企画を行っています。その際、一流のプロと組まなければ、ほんとうにお客様にご満足いただける価値は提案できないと、こだわって取り組んでいます。
その結果、従来は、便器なら便器だけで考えていたパブリック(非住宅)向けの商品デザインも、器具の寸法やR(カーブ)形状を統一するなど、空間をトータルにとらえた発想のデザインが生まれてきました。さらに、住空間においても壁、床、天井、窓など、立体的に空間をコーディネートした提案を行い、お客様に感動を与えられるまで質を高めることを追求しています。
鈴木 私も、商品開発や品揃えを考える際に、必ずトータルコーディネートを考えるようにと言い続けてきました。モノ不足の時代なら、シャツならシャツのデザインだけを考えていればすみましたが、いまやデザインや色、素材など、どんなジャケットやズボンと合うシャツなのかといった視点で提案していかないと、ほんとうにお客様にご満足いただける商品は提供できません。
また、質の高い価値ある商品を提供するためには、木瀬さんがおっしゃったように一流同士がいっしょに力を合わせることが必要です。私たちは、それをチーム・マーチャンダイジングと呼んでいます。商品企画、素材・原材料、製造、物流、販売促進などの外部の専門家や企業といっしょになって、お互いが持っている情報やノウハウを共有して商品開発を進めています。昨年5月に発売を開始したPB商品「セブンプレミアム」も一流メーカーさんといっしょになって取り組むことで、質の高い商品の提供が可能となり、お客様にもたいへん好評をいただいています。