
| 2008年2月 |
大きな社会問題となっている食の安全・安心や、健康的な生活の維持・促進、また、多くのお客様が利用する「公共の場」としての店舗づくりなど、セブン&アイHLDGS. のCSRの取り組みについて、前回にひきつづき、各事業会社の経営トップと社外の専門家・研究者との対話を通してお伝えします。
百貨店業界は今、多様な流通業態の登場、消費の選択肢の増加などによって大きな転換期を迎えており、百貨店の存在価値、その社会的責任や今後の方向性が問われています。そこで、これらの問題について、マーケティングの第一人者として活躍しておられる経済評論家・西村晃氏と佐野社長に語り合っていただきました。

西村 : 今、百貨店業界は大きな転換期を迎えています。こんな時代にあって、佐野社長は「百貨店の存在価値」とは何だとお考えですか?
佐野 : お客様の選択肢が大きく広がってきている中で、私たちは「百貨店ならではの満足感や喜び」を提供していくことが重要だと考えています。単にモノを販売するのではなく、一人ひとりのお客様に応じた上質なライフスタイルを提案すること、そのためには上質な商品・サービスが、百貨店にとってますます重要になってきています。
西村 : 提案力を強化するには、専門知識を備えた販売員も不可欠ですね。
佐野 : 当グループでは「スタークラブ」という認定制度を導入しています。これは、正社員・パートタイマー・派遣社員を問わず、販売・接客技術に優れ、お客様から高いご評価をいただいた実績をもつ従業員を「スタークラブ」メンバーとして認定するものです。こうして従業員のモチベーションを高めながら、高度な商品知識と提案能力、サービス精神を備えた人材を養成しています。
西村 :高齢のお客様や障がいのあるお客様への配慮も大切ですね。それは、企業としての社会的責任でもあります。
佐野 :はい。百貨店には、ご来店いただくあらゆるお客様にていねいな、きめ細やかな接客をすることが求められます。そこで当グループでは、接客担当者を中心に「ハートフルアドバイザー」の資格取得を進めています(1)。

西村 :高齢者や障がいのある方への介助、そういった方々とのコミュニケーションに必要な知識・技能を身につけるための資格ですね。
佐野 :ええ。今年度で1000名を超える従業員がこの資格を取得し、お客様のご案内やお買物のお手伝いなどに役立てています。また、お荷物を、ご要望に応じて駐車場や駅の改札口までお運びする「ポーター・サービス」を実施している店舗もあります。
西村 :なるほど。行き届いたサービスで、快適・安全にお買物をしていただこうというわけですね。そのほかにもミレニアムリテイリングでは盲導犬の育成事業支援にも取り組んでおられるとうかがいましたが?
佐野 :そごうが、2003年に「社会への感謝の気持ちを具体的に表したい」と考えたのが活動のきっかけでした。2004年から西武百貨店も加わり、基金を創設して盲導犬育成団体に資金を寄付したり、社内、店頭で 募金活動もしています。また、年2回、店舗で近隣の盲導犬育成団体と一緒に「盲導犬ふれあいキャンペーン」を展開し、お客様参加型のイベント「盲導犬訓練のデモンストレーション」「アイマスクを着用した体験歩行」「盲導犬とのふれあいタイム」などを開催し、多くの方々にご参加いただいています(2)。

西村 :盲導犬育成だけではなくて、従業員やお客様、地域社会の方々に、障がいのある方々への理解を深めてもらう効果もありそうですね。
西村 : ところで、西武池袋本店などの都心店舗は駅施設と直結していて、「民間企業の施設(店舗)」を超える「都市のインフラ(社会基盤)」的な役割を担っていますね。なかば公的な性格をもつ施設としての安全性・快適性をどのようにお考えでしょうか?
佐野 : ご指摘の通り、「公共の場」としての安全性・快適性の追求、災害対策などは、当グループの重要テーマです。年月を経た店舗の場合、増改築を繰り返してきた結果、複雑な店内構造になっていて、通路が狭かったり、わかりにくかったりというところもあります。そうした店舗については、今後、リモデル・改装や什器の配置、案内表示の改善などを進めていきます。また、2006年11月までに「AED(自動体外式除細動器)」を全店舗に配置し、さらに消防署が実施している「AED救命講習」に従業員を参加させるなど、万が一の時に迅速に対応できる体制づくりに取り組んでいます。
西村 : 店舗施設のセキュリティ対策に加えて、店舗で取り扱う情報のセキュリティ管理も重大な社会的責任ですね。とくに百貨店の場合、メンバーズカード会員など多くの顧客情報を取り扱っているわけですから。
佐野 : はい。お客様の個人情報保護は、最重要の経営課題の一つとして位置づけて、その扱いに関する厳格な「禁則事項」を設け、日々のセキュリティ管理と社内教育を徹底しています。
西村 : 情報セキュリティに「100%」はないかもしれませんが、お客様からの信頼に応えるためには、必要な対策を手を抜くことなく、積み上げていくことが大切です。
佐野 : 今後もセキュリティに限らず、商品や接客サービス、店舗づくり、そして地域社会との交流など、さまざまな取り組みを地道に積み上げていきたいと考えています。そして、一人でも多くのお客様から信頼され、愛される百貨店を目指していきます。
